1. 初めに
2人に1人が発病するといわれる大病、「がん」ですが、今回は国際がん研究機関(IARC)が公開している、科学的に証明されている発がん性のものの中から、私たちの身近にあるものをピックアップして解説します。
他の項目も含めた全一覧はこちらのリンクから
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000529380.pdf
2. 結論
・タバコ、酒、日焼けマシンはやめよう
・ソーセージ、ハム、ベーコンなどの加工肉はなるべく食べないようにしよう
・豚肉、牛肉を食べ過ぎないようにしよう
・熱い飲み物は65℃以下まで冷ましてから飲もう
・ステーキ、バーベキュー、焼肉などの焦げがつく肉は控えめに
・ポテチやクッキー、ビスケットは控えめに
3. 発がん性の分類
発がん性があるかどうかの確実さで、いくつかに分類されています。数字が小さいほど、確実に人に対して発がん性があるという判定です。
あくまで確実性なので、影響度が大きいわけではないこと、ご注意ください。
たとえば、極微量の接種でもがんが発症してしまうような、危険な化学物質も分類1ですし、普段浴びている太陽光も分類1です。
分類1
ヒトに対して発がん性がある。
ヒトにおいて「発がん性の十分な証拠」がある場合に適用される。
分類2A
ヒトに対しておそらく発がん性がある。
このカテゴリーは一般的に、発がん性評価のワーキンググループが下した評価が、以下のうち少なくとも2つを含み、その中に暴露を受けたヒトまたはヒトの細胞もしくは組織のいずれかに係るものを少なくとも1つ含む場合に適用される。
・ヒトにおいて「発がん性の限定的な証拠」がある
・実験動物において「発がん性の十分な証拠」がある
・「作用因子が発がん性物質の主要な特性を示す有力な証拠」がある
分類2B
ヒトに対して発がん性がある可能性がある
このカテゴリーは一般的に、発がん性評価のワーキンググループが下した評価が、以下のうちいずれか1つのみを含む場合に適用される。
・ヒトにおいて「発がん性の限定的な証拠」がある
・実験動物において「発がん性の十分な証拠」がある
・「作用因子が発がん性物質の重要な特性を示す有力な証拠」がある
4. 発がん性物質一覧
分類 | 物質 | |
国際がん研究機関公表 | 1 | アスベスト |
1 | アルコール飲料の消費に関連するアセトアルデヒド | |
1 | アルコール飲料中のエタノール | |
1 | アルコール飲料 | |
1 | ディーゼルエンジンの排気 | |
1 | ピロリ菌 | |
1 | 加工肉 | |
1 | 塩蔵魚、中国式 | |
1 | 太陽光 | |
1 | たばこの煙(受動喫煙) | |
1 | 喫煙 | |
1 | 無煙たばこ | |
1 | 紫外線 | |
1 | 紫外線日焼け機器 | |
2A | 夜勤 | |
2A | 赤身肉 | |
2A | 65°Cを超える熱い飲料 | |
2A | ベンゾピレン | |
2A | アクリルアミド | |
2A | 屋内におけるバイオマス燃料(主に⽊材)の燃焼 | |
2B | アロエ抽出物 | |
2B | アジア伝統の漬け物野菜 | |
2B | インプラント | |
2B | アスパルテーム | |
2B | 品位を落とした粉末寒天 | |
2B | 大工及び建具業 | |
2B | ガソリンエンジンの排気 | |
2B | ガソリン | |
他論文で統計的に明らかになっているもの | グリセミック負荷 | |
高BMI27以上(肥満) | ||
βカロテンサプリメント | ||
高体脂肪率 |
分類1:「確実に発がん性があることが証明されているもの」
有名なアスベストや喫煙などに加え、アルコール飲料や紫外線なんかもあります。
アルコール飲料はそれ自体に加え、アルコール摂取後に分解物として発生するアセトアルデヒドも発がん性であるようです。喫煙に関しては、受動喫煙や、最近よく見かける「無煙たばこ」も発がん性があるようです。
少し驚いたのは加工肉で、これはウィンナーやハム、ベーコン、コンビニの油を注入したフライドチキンなんかを指します。普段の料理やバーベキューなどで活躍する加工肉ですが、これらは製造の過程で、硝酸塩や亜硝酸塩といった発がん性のある添加物を加えているためといわれています。
欧米諸国と比べて日本では加工肉の消費量は多くなく、日本で実施した調査では加工肉の摂取量と発がん性に相関は見られませんでした。なので、そんなに過敏にならなくてよいとは思いますが、摂取しすぎないよう、なるべく加工肉を食べるのは控えておいた方が無難ですね。
分類2A:「おそらく発がん性がある」
ここに分類されるものは、意外だったものが多い印象でした。赤身肉は豚肉、牛肉などの赤身の肉で、赤身肉の色素成分である「ヘム」の影響などによって発がん性があるとされています。
65℃以上の飲料は、食道がんになりやすい傾向があるようです。熱いものが食道に損傷を与えてしまうのでしょう。アツアツのお茶やコーヒーを飲んでいる人は、少し冷ましてから飲むことを心がけましょう。
ベンゾピレンは、肉を焼いたときの焦げで発生する化学物質です。バーベキューや焼き肉、ステーキなどの肉を焦がす調理法の食べ物は、食べすぎないようにしたほうが良いでしょう。
アクリルアミドは、ポテトチップスや、クッキーなどの、炭水化物を120℃以上の高温で加工した物に高濃度で含まれています。アクリルアミドは細胞の中の遺伝子を傷つけ、がんになりやすくなると言われています。
分類2B:「発がん性の可能性があるもの」
インプラントは、口腔粘膜がんになりやすいことが示されております。また、最近この一覧に追加されたのが、人工甘味料のアスパルテームです。
元々体にいいとは思っていませんでしたが、ガソリンやガソリンエンジンの排気も、発がん性の可能性がありました。
他論文で統計的に明らかになっているもの
グリセミック負荷とは、血糖値スパイクのことで、炭水化物や糖質を摂取した際の急激な血糖値上昇を指します。グリセミック負荷は,子宮内膜がんのリスクを上げることがほぼ確実な要因とされています。ご飯の前に野菜類を食べる、急いで食べない、血糖値の上がりにくい全粒穀物の摂取するなど血糖値スパイクを起こりにくくすることを心がけましょう。
肥満は閉経後の乳がん、大腸がん、肝がんのリスクを上げることがほぼ確実であると評価されています。30万人以上のデータを解析した結果、BMIが 1 増加するごとに大腸がんのリスクは男性で1.03倍,女性で1.02倍あがることが明らかになっています。男性ではBMI23ー25の群に比べ,27ー30と30以上の肥満が統計学的有意なリスク上昇が観察されました。
βカロテンサプリメントについては、あくまで食事から得られる栄養素としてのβカロテンではなく、「βカロテンのサプリメント」です。肺がんのリスクを上げる確実な要因と評価されています。βカロテンはサプリでなく食事から摂りましょう。
最後に
たばこや酒、加工肉などは避けるように意識した方がよいですが、赤身肉や太陽光など、体に良い効果もあるものもあります。「ここに乗ってるものは絶対摂取しない」のような極端な思考に陥らず、賢く健康に生きていきましょう!
詳細は参考資料をご覧ください。
参考文献
加工肉が、がんを引き起こす仕組みと影響 | がん治療・癌の最新情報リファレンス
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2015/1029/20151029.pdf
Jay H Lubin,et al. Maté drinking and esophageal squamous cell carcinoma in South America: pooled results from two large multicenter case control studies. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2014 Jan;23(1):107 16.
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-20592311/20592311seika.pdf
石原淳子,食・栄養とがん予防:日本のエビデンスの現状と解決に向けた方向性